裏切りについて~梅雪や信茂~

穴山梅雪と小山田信茂

ここでは、詳細な史実にこだわるのではなく、あくまで大局観に見る彼らの「裏切り」についての記事としたいと思います。

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木曽義昌・穴山梅雪・小山田信茂の「裏切り」が勝頼を窮地に追い込む

大河・真田丸に見られる彼らの裏切り(すべてをひとくくりで語ってしまうのもどうかと思うのですが・・・)は、第1話・第2話でみられるような、実直で優しいイメージの武田勝頼を窮地に追い込み、やがて滅亡の引き金となります。いわゆる武田家の一門(身内)でありながらも、自分の都合ばかり考えて行動する彼らにやがて訪れる最期は、視聴者にある種の気持ち(道理に反することをすると己に必ず返ってくる)を想起されることと思います。

しかし、物語の主人公である真田家に関しても、自家の生き残りを最重要課題として行動していることに代わりはないので、彼らの「裏切り」を単なる極悪非道なおこないとして捉えてしまうのもどうかな?との気持が沸いてきます。

この時代に生きた人々(特に豪族や大名と呼ばれた人々)の感性と、現代に生きる我々の感性の決定的な違いは、「最小単位」という価値観をどこに置いているのか。ということに尽きるのではないでしょうか。西洋化している現代の日本人は、「個人」というものの価値を大切にし、またそれを尊びます。しかしこの時代、紛れもなく最小単位は「家」でした。自家の存亡を最大の重要事項とし、思考を展開する当時の戦国武将と我々では、その考え方に隔絶の差があるように思います。

我々がストーリーから感じる印象はさておき、真田昌幸と同じく、梅雪も信茂も、この「家」という最少単位を守ることにこだわり、思考し、策謀し、史実、行動にうつしたことでしょう。

武田家の運営システムと信長が起こしたイノベーション

武田信玄の偉大さは、当時、最強と謳われた軍団を作り上げたことや、その領地経営の見事さにあったことは疑う余地がありません。そのカリスマ性と求心力をもって並み居る豪族を従え、統率したからこその偉業でした。

武田最強軍団グループの創業者として、この企業を経営していくわけですが、期待した二代目(実力も実績もあり、決して才能がなかったわけではない)は、その実力を発揮することなく、倒産の憂き目にあうことになります。

この武田最強軍団グループを窮地に追いやったのが、織田信長という軍団経営において一歩先をいった企業家です。彼が起こしたイノベーションは、ひたすら戦闘ばかりを繰り返さなければならないこの時代において、戦闘のみに集中して行動出来る軍団を創るという、実にシンプルな考えに基づいた、しかし当時の他の大名がなかなか気づけない(わかっていても出来ない)、これまた偉業でした。

前時代的であるとは言え、たいへん優秀なグループを創設した信玄でしたが、信長のまったく新しいシステムを持った軍団にはやがて歯が立たなくなる過程で、勝頼はその最期を遂げることになります。(※雑なたとえにはなりますが、機能的にも優れた日本のフューチャーフォン・ガラケーが、全く新しい価値観を生み出したスティーブ・ジョブズのスマートフォンにそのシェアを取られてしまったのと似ています。)

信長という革命児が出現したことで、それまで機能していたシステも旧式のものとなってしましいました。これにより、個々に強い豪族の集団であった武田家は、面白いほどに空中分解を起こし、それぞれは、最小単位の「家」を守るという行動原理に基づき、吸引力を失った主家より離れていったということでしょう。

独立に成功した真田一族

結果として、それぞれの元・武田家臣がとった行動というのは、(あくまで大局観で見ればですが・・・)大差はないかのように思います。成功者としての真田昌幸は後世、英雄として歴史に語られますが、失敗した人々はあくまで「裏切りもの」として、現代の我々にも不名誉なイメージを与えてしまう。大河・真田丸では語られない、物語の一面ではないでしょうか。

 

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