ウクライナやロシア関連の書籍が並ぶ書店の特設コーナー(大阪市北区で)=泉祥平撮影 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、関連する書籍が売れている。歴史や軍事、民話など様々なジャンルへの関心が高まっており、特設コーナーを設置する書店もある。 大阪市北区の「MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店」では、侵攻直後の2月末から関連本の注文が増え、3月上旬に特設コーナーを設けた。これまではほとんど取り扱っていなかったが、現在は約50種類を取りそろえる。 藤井啓晶・副店長(44)は「若いお客さんが多い中、時事関連の本がこれほど売れるのは珍しい。(2001年の)米同時テロで、イスラム関連本が売れた時と似ている」と話す。 中でも人気なのは、元駐ウクライナ大使・黒川祐次氏の「物語 ウクライナの歴史」(中公新書)だ。02年に刊行され、ロシアがクリミアを併合した14年にも9000部を増刷したが、侵攻後は12万部を増刷した。 出版元の中央公論新社には、読者から電話やSNSで「ウクライナとロシアとの関係が理解できた」などの反響が寄せられているという。 ウクライナ民話の絵本「てぶくろ」(エウゲーニー・M・ラチョフ絵、内田莉莎子訳)も、手にする人が増えているという。日本では、福音館書店が1965年に初版を発行した。 冬の森を舞台に、おじいさんが落とした手袋にネズミやキツネなど7匹の動物が次々と潜り込み、窮屈になりながらも仲良く過ごすという内容だ。 MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店では侵攻前、月に1冊程度の売れ行きだったが、侵攻後は16冊を販売。藤井副店長は「争いのない世界を表した作品。保護者らが、子どもたちに平和の大切さを伝えようと購入しているのでは」とみる。 東大先端科学技術研究センターの小泉悠専任講師が昨年5月に刊行した「現代ロシアの軍事戦略」(ちくま新書)も侵攻後、7万5000部を増刷した。初版は9000部。ロシアの過去の軍事侵攻やサイバー攻撃の手段を紹介している。筑摩書房の担当者は「軍事関連の新書は少なく、ロシアが何を考えているのかを知りたい人が多いのではないか」と話した。
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