「美作地域」歴史訪ねて

出土品や復元模型、資料300点 「津山郷土博物館」 小郷利幸館長 古墳から出土した土器や装飾品(津山市で) 展示されている津山城の精密模型(津山市で) 大名行列で使われた津山藩の熊毛槍(津山市で) モダンな外観の津山郷土博物館(津山市で) 津山市の鶴山公園(津山城跡)の石垣を背にして立つのが、津山郷土博物館だ。左右対称のアール・デコ様式を取り入れたモダンな建物は、元は1933年に落成した旧津山市役所で、88年に増改築され博物館に生まれ変わった。2006年には国の登録有形文化財に指定され、博物館が文化財そのものとなっている。 館内に入ると、重厚感のある大理石の階段がまず目に入る。「よく見るとサンゴの化石が確認できます。化石を探しながら階段を使うのも楽しいですよ」と、小郷利幸館長(58)が教えてくれた。 展示室は1、2、3階の各階(計約550平方メートル)にあり、新生代から古墳、奈良、江戸、現代までの現在の津山や周辺地域に関連する資料を中心に、約300点を並べる。 貴重なのは1階に置かれた約1500万年前の哺乳類・パレオパラドキシアの骨格復元模型(全長約210センチ、高さ約85センチ)。1982年、同市上田邑の工事現場から出土し、当時は日本とアメリカでしか見つかっていなかったことと、発見したのが男子中学生だったことも加わり、全国的に脚光を浴びた。 小郷館長にとって思い出深いのが、1階に展示される弥生時代のガラス管玉と、古墳時代の 勾玉まがたま などで、ともに自身が発掘に携わった。ガラス管玉(長さ約2センチ)は1995年、有本遺跡(津山市下田邑)から出土したもので、古代中国で生産されていた青色顔料「漢青(ハン・ブルー)」が、国内で初めて科学的に確認された貴重な史料だ。 勾玉(長さ3・7センチ)と銅鏡(直径9センチ)、鉄剣(長さ30センチ)の三種の神器は、近長丸山1号墳(同市近長)から出土した古墳時代のもの。小郷館長は「盗掘されていた古墳だったが根気よく作業を進め、銅鏡が見えたときには興奮しました」と当時を振り返る。 2、3階には古代から江戸時代の津山を学べる展示物が並ぶ。初代津山藩主・森忠政(1570~1634年)が築いた津山城を150分の1に縮尺した約2・5メートル四方の模型や、現在の町並みの原型の1723年(享保8年)頃の町割り図「津山城下町絵図」(県指定重要文化財)がある。森家と代わり津山藩主になった松平家の目印で、大名行列の際に掲げた15キロ・グラムもある黒と白の熊毛 槍やり 2本(同)も展示されるなど、藩の歴史を分かりやすく紹介する。 館外にも美作地域で確認された石棺や、道路整備などで行き場を失った道標石などが移設されており、訪問するだけで<津山通>になれる施設だ。 新型コロナウイルスの感染拡大前は年間約6000人が来館していたが、現在は4500人に減少。今後1万人を目標に年6回以上の企画展や古文書講座、1989年から続いている市内の遺跡を訪ねる文化財めぐりなどを積極的に進めるという。小郷館長は「美作地域の歴史の移り変わりや文化を間近で見てほしい。興味やロマンを感じてもらえたら」と話している。(黒川武士) <MEMO> JR津山駅から北へ徒歩15分。中国自動車道、津山・院庄各インターチェンジから車で15分。開館時間は午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)。一般300円、高校・大学生200円、65歳以上200円。休館は月曜と祝日の翌日、12月29日~1月3日。問い合わせは同館(0868・22・4567)。

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