東京都東村山市の国立ハンセン病療養所「多磨全生園(たまぜんしょうえん)」にあった院内学校をテーマにした企画展が、東村山ふるさと歴史館(諏訪町一)で開かれている。国の政策で強制隔離され、差別と偏見に苦しむ中、読み書きを学び、詩や文を作った子どもたちの思いを垣間見ることができる。(岡本太) 多磨全生園では、前身の全生(ぜんせい)病院が開院した翌一九〇八(明治四十一)年、院内の礼拝堂に寺子屋を開設。大人の入所者が先生となり、子どもたちに勉強を教えた。遠く離れた家族に手紙を送るために読み書きを習う子どもも少なくなく、三〇(昭和五)年ごろには児童・生徒数は約八十人に上った。 三一年に校舎を新設して全生学園が開園。ただ、私的な教育機関との位置付けは変わらず、教師は入所者のままで、卒業証書も発行されなかった。五三年、ようやく地元校の分教室として正式な公立学校となったが、教員は足りず、予算不足で教科書も買えない状態が続いたという。 企画展では、寺子屋から公立学校までの各年代の教室や子どもたちの様子などを写真パネル約三十枚で紹介。寺子屋時代の展示では、午前中に治療用のガーゼを伸ばす作業をしてから授業に向かう子どもたちの様子などを解説している。 このほか子どもたちの詩や短歌、俳句などを集めた文芸誌「呼子鳥(よぶこどり)」や学校文集の写真も展示。院内学校での学びが、療養所で盛んだった詩歌や文学などの芸術活動につながったことも紹介している。 分教室となった院内学校は子どもの減少に伴い、七九年に休校。校舎は二〇〇八年に解体された。 歴史館の学芸員松崎睦彦さん(52)は「厳しい環境の中、学校を維持してきた入所者の努力や、懸命に学んだ子どもたちの思いを知ってほしい」と話している。企画展は十二月四日まで。入場無料。問い合わせは同館=電042(396)3800=へ。
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