天正壬午の乱

本能寺の変で織田信長が横死したことにより、旧武田領は、上杉・北条・徳川の草刈り場と化し、混乱します。

そんな中、真田昌幸は各国のバランスを上手く利用しつつ、謀略の限りをつくして窮地を乗り切り、独立大名としての基盤を築いていくのでした。

 

織田信長の急死後の動き、激動の天正10年

天正10年(1582年)3月11日の武田家滅亡と、そのわずか3カ月後の6月2日には、「本能寺の変」による信長の急死により、武田家の旧領を巡る争い、天正壬午の乱が起きます。この戦乱の終息は、豊臣秀吉が関白となり天下統一を標榜し始める天正13年3月まで待たなければなりませんでした。中でも、この期間の信濃国内の豪族の興亡は激しく、もちろん、真田昌幸もその渦中の中の一人であったと言えます。

昌幸は武田勝頼の死後、いったんは織田信長に臣従。織田家の関東管領として上野(こうずけ)国、厩橋(まやばし)城(現:前橋市)に入ってきた、滝川一益の与力衆となります。変事が起きると、一益は侵攻してきた北条氏に対抗。いったんはこれを退けて領国にとどまりますが、6月18日の神流川合戦で敗れ、最終的には伊勢国に帰国しています。その途上、信濃小諸(こもろ)城や木曾善昌の木曾福島城に一時滞在。昌幸は嫡男・信幸をその警護にあたらせています。

信繁は一益の人質となっていた

滝川一益は関東に入る際、織田家に臣従した領主たちから人質をとっており、昌幸も次男の信繁(当時、元服前の少年期)を差し出していたと考えられています。福島城にて我が身の安全を確認した一益は、その際に信繁ら人質を解放しました。

 

一益の離脱により、北条家につく昌幸

滝川一益を追撃した北条氏直、6月の下旬には信濃に入ります。小諸城にいた依田信蕃(よだのぶしげ)を追い、佐久郡を制圧。これをきっかけに小県の国衆が北条に臣従。昌幸も7月9日は家臣を派遣して北条方へつくことを打診しています。同じ月の13日には、他の国衆13人とともに氏直のもとに出頭。そして26日には、家老の矢沢頼綱(昌幸の叔父)・大熊朝秀が北条家に人質を出すことで帰属が決定しました。

 

家康からのアプローチにより、北条を離れ徳川方へ

しかし、このような昌幸の北条への臣従も、実際には緊急的なものと思われます。その背景に徳川家康の存在があり、信濃東部・甲斐での、徳川vs北条対決が激化。合戦化しています。この対決は、8月初旬~10月末ごろまでの4カ月間に及び、両者の睨み合いが続いたものと思われます。

この間、家康は依田信蕃を使い佐久・小県の国衆の調略をすすめ、昌幸に対しては信蕃とともに、昌幸の弟・信尹も折衝に加わって徳川方への帰属を願い出ました。

昌幸の北条への帰属は、9月28日には終了していたものと思われます。(※家康から昌幸への当知行の安堵。他所の新知の宛行約束状の発行)

そして、北条を離脱、徳川方についた昌幸は北条の背後を攻撃。このため北条は小諸・碓氷峠の防衛を余儀なくされるのでした。

 

秀吉の台頭、徳川・北条は同盟へ

北条・徳川が長期にわたり対峙している間、織田家では「清州会議」が開かれ、信長の後継者に信長の孫・三法師が選ばれ、その後見人である秀吉の存在感が増していきます。そして、疎外された信長の次男・織田信雄が家康に支援を要請。これにより、家康は北条との和平交渉を勧めることとなります。

井伊直政の交渉の結果、10月29日に和睦が成立。徳川・北条間の同盟が誕生しました。

この同盟の条件には、

・北条氏は甲斐・信濃からの撤退(逆に言えば甲斐・信濃は徳川領とすること)

・徳川氏は上野からの撤退(逆に言えば上野は北条領とすること

上記のようなかたちになりました。

 

このことが、後の昌幸・家康の遺恨の種に発展してきます

「上野は北条領とすること」これが昌幸にとっては大問題となります。現実には上野国には徳川領はなく、真田領であった沼田・吾妻を家康の独断で北条に明け渡すことに決定しています。家康は昌幸に西上野から撤退させ、替地を信濃で与えるつもりでしたが、それに匹敵する領地ななく、上野国は現状維持のまま、時間が過ぎることになります。

一方、北条はすみやかに甲斐・信濃から撤退。家康に対しては、盟約通りに実行することを打診しますが、怒る昌幸が退去するはずもなく、問題が大きくなっていきます。この間、北条氏も自力で沼田城を攻めるなどしますが、これを預かる真田家臣の矢沢氏が防戦。昌幸も信幸を支援に送り込むなどして、両者の間では激しい合戦が繰り広げられています。

この間に昌幸は、上杉も含めた、北条・徳川などの大大名に本格的な対応をするため、上田城の築城を始めています。家康との遺恨を逆に利用した昌幸のはてしない謀略と言えます。

上田城の築城秘話はこちらをご覧ください。

 

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